膿皮症〜自然療法で完治への道
膿皮症をはじめとした、愛犬の慢性的な皮膚炎に悩む飼い主さんはとても多いです。
ステロイドや抗生物質を使えば即効性がありますが、このレポートでは犬本来が持つ自然治癒力を鍛えるアプローチで膿皮症を克服したレポートをご紹介します。
愛犬アランは、1年以上ものあいだ体のどこかに膿皮症がありました。
まだ若かった時は季節の変わり目に膿皮症ができて、ステロイド薬を塗ると治って再発することはありませんでした。
ところが、6歳を過ぎた頃からボツっとできた皮膚炎が完治しなくなり、7歳を迎えた今年、気候が秋に変化した9月中旬のある朝、突然ヘルニアと一緒に全身の膿皮症を併発したのです。
全身図で見るとこの通り。
膿皮症は、皮膚に常時付着しているマラセチア菌が悪さをしてできると言います。何らかの理由で免疫バリアが弱った結果、皮膚炎を起こすということです。
しかし、これほどまでに全身にいくつもの皮膚炎を発症したのは初めての事でした。
(10月中旬のアラン)
膿皮症の発症:
はじめは、ボチっとした出っ張りが指で触ってわかります。そしてフケのように皮が剥けていくのです。
主治医の先生は西洋獣医学。これまでもステロイド剤や抗生物質で膿皮症を治療してくださっていました。
でも、完治しない。
しかも、胃腸が荒れてしまって便が液体状にまでなってしまいました。
そこで、ある東洋獣医学の先生からのアドバイスをヒントに、通える距離で漢方薬や針治療ができる動物病院を探しました。
食餌が全ての基本:
見つけた自然療法の獣医さんにより、膿皮症の原因を突き止めるための治療が始まりました。まずアドバイスされたのが、食餌のことでした。
アランはブリーダーさんから迎えたパピーの頃から腸の弱い子でした。体が生育するまでウンチの回数は平均8回。成犬の今でも3、4回です。
フードも限定した銘柄を選ばないと下痢をします。
「腸と皮膚の健康は直結していますよ」 と、先生は次のアドバイスを下さいました。
- 野菜をできれば3種類、与えてはいけない野菜以外は自由に
- オクラなどのネバネバは体に悪いものを吸着排出してくれる
- えごま油か亜麻仁油を少量
ドライフードを減らし、ネギやアボカド*などは避けましたが、夕飯のおかずに使う野菜の一部を使えばそれほどストレスはありません。
茹でる場合もあれば、生であげる場合もありました。
*犬に与えてはいけない食材は「犬は人間とは違う」や「犬にチョコレートは命取り、の実態」の中で詳しくご紹介していますので、併せてお読みください。
ヘルニアは、ホモトクシコロジーとオゾン導入という治療法で一足早く治りました。
ヘルニアで痛みがあった箇所に集中的な膿皮症があったアラン。最初の膿皮症が消えてもまた新しくできます。
次から次へと膿皮症が発症する箇所が、下腹太ももの内側、胸、後ろ足、顔などに移ってきました。
10月下旬、目の上から耳までの間などに膿皮症が発症し、ボサボサと毛が抜け落ちていました。
このままでは治らないのではないか
一向に治らない膿皮症に気持ちも沈みがちになってきました。
左の写真のように、膿皮症による抜け毛は最初よりは減ってきてはいるものの、また左脇腹のあたりに新しく発症し、ボロボロとフケのように皮膚が落ちています。
この後に毛が抜け落ちてハゲになります。
ゲリラのように発生する膿皮症を見ていると、綺麗に毛が生えていた愛犬には二度と戻らないのかもしれない、と悲しい気持ちで思いました。
この頃になると、先生は漢方薬を通常よりも多く出してくださるようになりました。また、どこかで犬は年を重ねるごとに生肉がいい、と聞いたので、先生に伺うと、否定もされず、あげてみてください、とのことでした。
健康で元気なシニア犬のいる友人からミニトマトを毎日あげている、マグロの刺身も分けている、と聞けばそれも試してみました。
なんでも試してみたのです。
ある日の食餌例です。
この日は夕飯のおかずに使ったマグロの赤身、きゅうり、トマト、ゆでた人参。
それと毎回入れるようにしていたのがキノコ類。動物看護師の友人から特にシメジが免疫力アップにいいと聞いていたからです。
皮膚炎はストレスからも来るといいます。膿皮症も例外ではないでしょう。
ヘルニアの痛みによるストレスもあるでしょう。ヘルニア治療とストレスケアを兼ねて、テリントンTタッチのヘッドラップ。
11月中旬のこの頃、膿皮症は少し少し目立たなくなってきました。
このテリントンTタッチのヘットラップは、興奮したときのアランをスーッと落ち着かせる効果があります。
また四肢にクロスして全身に巻くことで体のバランスが整い、ヘルニア治療にも効果的でした。先にヘルニアが治ったのは良かったです。
スキンケア、スキンケア
食餌、ストレスケアに加えて膿皮症治療に大事なのがスキンケアです。
お風呂には1週間に2回入れて、マラセチア菌が悪さをしないように専用シャンプーとリンスでケアです。
背中の膿皮症多発エリアも念入りに、願いを込めて洗っていました。
そして、ついに膿皮症は消えた
全身に膿皮症が広がってから約3ヶ月。
12月中旬になると、アランの体は数年前のようにきれいになりました。
これまでの治療法、ステロイド剤では再発を繰り返した。
抗生物質を与えると、便が水状になり腸が荒れた。
だから、今回腹をくくって自然療法に徹してみました。
「3ヶ月かかるつもりでね」
これは、ある方から頂いた励ましの言葉で、文字通り励みになりました。
先週末、先生から被毛と皮膚の状態をチェックしていただく愛犬。
この後、漢方薬を減らして、次回また診察していただくまでの期間が長く延びました。
アランの体は今、若い頃のように艶のある被毛に覆われています。
色々やりましたので、どれが一番良かったのかわかりませんが多分、漢方、お風呂、食餌ではないかと思います。
さて、まとめますと、膿皮症治療では次のことをやりました。治療方法は個体別に色々あると思いますが、アランの場合はこれからも続けたいと思います。
- 食餌を変える。野菜を多く取り入れる
- 生肉やお刺身を時々入れる
- 漢方薬と乳酸菌を与える(病院より処方)
2016年12月21日
本文:犬と暮らす
病気解説と監修:獣医師 石川安津子