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Life with My Dog 犬と暮らす

新型コロナ後の新しい愛犬との関係


現在、世界中が大きなグリーフ(深い悲しみ)の中にいます。誰もが程度の差こそあれ、ストレスと呼ばれるものを自分の内側に抱えています。皆様の日常はどう変化したでしょう。そして共に暮らす犬達との関係は、どう変化したでしょうか?外出を含めた様々な自粛は犬との生活にも変化をもたらしています。

 

(1)おうちの中にいる長い時間
最初に、おうちの中のことを考えてみましょう。外出の自粛で家にいることが多くなっているということは、当然ワンコさんと過ごす時間も増えてきているわけです。喜んでいるワンコさん達も多いでしょうね。いつもは留守番が多い日本の犬達も、家族が家にいるのですから。
でも一方で、そうではない部分もあるのではないかとも考えてしまうのです。

犬は人間の不安に敏感
犬達もいつもとは違う不安な気持ちを抱えているかもしれません。私達は家という一つの空間に中にいます。もし一緒に暮らしている人がストレスを強く抱えて、悲しみや憂鬱、いら立ち、時には怒りを感じていたとしたら。
人間同士だとしても、空間を同じく過ごす人がそれを感じていれば、なんとなくこちらまで晴れやかな気分でいることは難しいものです。
これはもちろん犬も同じことです。犬達はコロナウイルスのニュースなんて知らないかもしれません。でも、人間に変化があったことをちゃんと気付いているはずです。
私達だってしかめっ面をしている人の横にいると気が滅入ったり、不安を感じてしまいますよね。そしてそれは新たな不安の連鎖に繋がっていくことになるわけです。

犬はとても敏感な生き物です。

人間の、家族内の不安に気付いて、犬自身も不安を感じていると思います。その不安がいつもとは違う行動を引き起こして、一緒に暮らす人を驚かせたり、困らせていたりするかもしれません。
もし、そんなことが起きていると感じたら、ワンコさん達のその困ったと感じる行動を叱らないであげて下さいね。

まず、わたしたちが肩の力を抜いて
じゃあどうしたらよいのでしょう。まずは大きく息を吸って、ふうって吐いてみましょう。息を吸う時に肩をちょっと上げて、吐くときに肩をゆっくりおろして、力を抜いてみましょう。そして、右左、前後ろ、天井と床に視線を向けてみましょう。
できればここでにっこりしてみてください。少しだけでも笑顔になってください。
困ったと感じる行動に笑顔を向けるのは難しいかもしれませんが、それでお互いの気持ちが楽になるかもしれません。

人と犬はお互い様で生活をしているのです。
合わせ鏡のようなもので、人の不安は犬に、犬の不安は人に行き来しています。
犬達は今の「ステイ・ホーム」に付き合って、私達をやわらげてくれています。なので、人の方もちょっとだけワンコさんのために笑顔になってあげてください。

犬と遊ぼう!
おうちの中で犬も人も楽しくなるような遊びを取り入れてみてください。
犬はおうちの中で退屈しているのかもしれませんよ。人と犬が楽しいと思うことは少し違うところもあります。
例えば、人には楽しいものではないでしょうが、どんな年齢のワンコさんでも、食べ物やおやつをクンクン匂って探す遊びはとても楽しいものです。
犬のいないところでおやつを隠してから、その部屋に愛犬を放つ宝探しゲームは、簡単にスタートすることが出来ます。


一緒に遊んでワンコさんもストレス発散

知育玩具と呼ばれるものはたくさん売られていますし、インターネットで「犬・手作りおもちゃ」と検索すれば、犬の家の中での暮らしを楽しくする手作りグッズが紹介されています。家にいる時間が多くなっている今、人間も時間が潰せてよいと思いますよ。

家で過ごす時間が多くなれば、犬との触れ合いの時間も増えていると思います。この機会に私たちの触り方で、犬と人がどんな気持ちになっているのかも考えてみましょう。

 

(2)家族は愛犬をどう触っている?
いつも犬を触る時にどんな触り方をしていますか?
急に強い力でぐしゃぐしゃ触ったりしていませんか?


あなたのこと大好きだけど、イヤな触られ方もあるんだ

まずはワンコさんに尋ねてみましょう。

今、あなたを触っていい?

犬が自分から近寄ってきて撫でてほしいという仕草を見せてくれていれば、ゆっくり優しい力で撫でてあげてください。
つい力を入れてしまいがちですが、ゆっくりと優しく触ることは、副交感神経に働きかけて、身体の緊張を解いて、ゆったりとした落ち着いた気持ちになれることを手伝います。

もちろん触っている人の方も同じ気持ちになれます。ゆっくりと触れることで、犬の身体の変化や、体調などにも気づきやすくなります。毎日の健康チェックになります。
犬にとっては、正面から顔を対面することは友好の合図ではないので、ちょっと横から。覆いかぶさらないようにも配慮して。

犬が触らせてくれない
もし、ワンコさん尋ねて、触ってほしくない、ほっといてほしい、という仕草を見せたら、無理はしないであげて下さい。
触られたくない時間だってあります。
これは一緒に暮らすご家族も同じです。ぜひお子様、配偶者、親御様に伝えてあげてください。
「今はそっとしておいてあげてね」。と。

犬の休憩場所
おうちの中に、ワンコさんが家族から邪魔されずに休める場所を、最低一か所確保してあげて下さい。あまり家族が来ない静かな場所や、クレートの中もいいかもしれません。
そこに自分から入って休んでいる時は、そっとしておいてあげましょう。もちろんご家族みんなで。
人間と違って犬は言葉を話しませんが、態度や仕草で「今はそっとしておいてね」と家族とコミュニケーションをとっているのです。

犬の仕草から犬の感情を理解する
この自粛の機会に、家族で、犬の仕草について学んでみてもよいですね。

犬の仕草とは、例えば尾っぽの位置や、耳がピン!と立っているか寝ているか。
耳の裏を掻き掻きしたり、欠伸をしたり。


急に耳がピン!って立つことがあるでしょう

私たちの目から見て可愛い、面白い、可愛くない…というよりは、犬がどんな感情でそういう仕草をするのかを考えてみましょう。
犬の仕草については、当サイト内「犬と暮らすための知識」内にもイラストによる説明があります。

犬の仕草を理解することは、相手のことをよく観察する、相手の立場になって考えてみる、という良い練習になるかもしれません。
相手のことがわかれば、お互いの信頼関係ももっと深まっていくでしょう。

 

(3)お散歩の時間を豊かに
では、今度はお外に目を向けてみましょう。この自粛の状況でも、適度な運動として人と距離を保ったお散歩は勧められています。今まで歩く習慣のなかった人も散歩を始めていらっしゃるかもしれません。
そんな中で、普段はあまりお散歩に出ないワンコさんたちが、おうちの人に連れられて、一緒に外に出ることも起きているようです。でもこれ、犬にとってみたらちょっと困惑することになるかもしれません。

愛犬はお散歩を楽しんでいる?
あなたのおうちのワンコさんはお散歩を楽しんでいますか?以前からお散歩が大好きだったワンコさんにとっては至福の時間でしょう。でも、そうではなくて、今この状況で急にお付き合いさせられちゃってるワンコさんにとっては、ちょっとしんどいかも。
人も犬もお互いが楽しくって行くのが理想のお散歩。


迷子札はちゃんとつけてね

マイクロチップと迷子札
お散歩に行くときは、首輪にリードを付けますか?ハーネスを着用していますか?
マイクロチップが普及し始めている昨今ですが、家にいてもお散歩に出かけても、首輪は必ずつけてあげてください。そしてそこに必ず迷子になった時の連絡先を伝える迷子札などをつけてください。
犬は言葉で自分がどこの家に暮らしているのか、伝えることはできません。ワンコさんが家族の手から離れてしまったときに、首輪についている迷子札は無事におうちに戻ってこられるための命綱なのです。

お散歩のリードはハーネスに!
これに加えて、お散歩はハーネスをお勧めします。その理由は次に述べます。
ハーネスにもいろんなタイプがあって、これもいろいろ調べてみて、各自のワンコさんに合ったものを選んであげてください。専門家に相談してみるのも良いでしょう。

首輪は首に重大な衝撃を与えている
首輪がお散歩としてお勧めできない大きな理由は、解剖学的な理由が大きいのです。


首の骨、頚椎はとても細いんだよ

皆さん、ご自分の首を手で触ってみてください。首の中心には頸椎という骨のつながりがあり、もちろん食べ物などの通り道となる食道や、呼吸をするための気管、からだの新陳代謝を受け持つ甲状腺ホルモンを分泌する甲状腺なども位置します。これは犬も同じです。

もともと首輪というのは、昔、牧畜を守る仕事をしていた犬達が、オオカミなどの生き物から自分の身を守るために、首に棘のある輪をつけていたことが始まりといわれています。
本来なら身を守るための道具が、時代や場所を変えてトレーニングの道具となり、お散歩の道具と変化してしまったわけです。私達でも理解できる大切な首の役割。首に与える衝撃をできるだけ減らしてあげてほしいのです。


元々は、喉を野生動物から守るために首輪をしたんだよ

私達が経験する、いわゆる「むち打ち症」のような状態を引き起こさないように気を付けてあげてほしいのです。

「正しい」犬のお散歩って?
ちょっとお散歩の話を広げちゃうと、今までの日本(今でもそうかな)では、お散歩は「人の横について歩く」「他の犬、他の人を見ても騒がない」「匂いかぎをさせない」・・・って理想の定番でした。
今でも多くのワンコさんたちがこのルールと目標にむかって散歩をしているように思います。

でもそれって人間が決めたことで、犬の側としても人に気が付いてほしいことがたくさんあるように思います。
引っ張ってなければちょっと前や後ろを歩いたっていいじゃない?
他の犬や人が嫌いだったらどうやったらトラブルを回避できるか、人が工夫して上げてもいいと思わない?
匂いだってかいでいい時間と場所を選んであげてるってどう?
こんなふうにちょっと考え方を違う方向から見ていくと、お散歩は楽しくなっていくかもしれませんね。もちろん、その方法をプロの方から教えてもらうのもよいと思います。

犬と歩くリズムを変えるだけでもっと楽しい
お散歩中に、ゆっくり歩く、という歩き方を、ちょっとの時間でもいいので意識して取り入れてみてください。まずは人間が右足、左足をゆっくり交互に前に出して歩きます。歩くときはまずは踵をついて、その後につま先に重心を移します。自分の重心がどんな風に自分の中で動いているか感じてみてください。
人も犬も視覚を最優先に使ってしまうので、いつも気持ちが自分の外側に向かってしまいます。でも自分の身体の内側に気持ちを向けると、落ち着きが生まれて、穏やかになっていくんですよ。もちろん犬も同じです。
人がゆっくり歩いて、犬もゆっくり歩く。そんな時間を取り入れてみてください。

犬が思うように歩いてくれない理由
犬が私達にとって戸惑うような困った行動をした時は、どうしても犬にその行動をやめてほしいという対処方法をとりがちです。お散歩中に他の犬や人に吠えてしまう犬を叱ったり、リードを持ち上げたりしてやめさせようとしている場面をしばしば見かけます。

人間と犬は生活様式やコミュニケーション方法が違います。
想像してみてください。
もし、私達人間が犬中心の社会の中に入って暮らしたら。
もちろんどうしていいか分からなくて困ってしまいます。

人間としてこうするのが普通だよな、という行動をした途端に


人間ならいいことでも、犬はイヤなの?

犬に吠えられたりかみつかれたりしたら
不安でいっぱいになってしまうはずです。

犬達はその逆で、人間の社会の中で犬として行動しています。
犬としてこうするよな、という行動をして人から、大声を出されたり、叱られたりすれば、不安で仕方ないでしょう。

 

(4)楽しい方法を教えるレッスン

犬のお散歩以外でも、日々の生活でお世話をする時に、犬に協力してほしいことはたくさんあります。
爪切りや、耳が汚れていないかチェックしたり、お口の周りを拭いたり、散歩から帰ってきて手足を拭いたり。
人間と暮らすからこそやらなくてはならなくなっていることを、できるだけいやな気持にさせないで行えるように、普段から練習しておきましょう。

「ハンドターゲット」は簡単で便利
こっちに来てね、を練習する方法として、ハンドターゲットは教えておきたい大切な合図です。
人の手のひらをパッと見せると犬がやってきて鼻をタッチするというものです。


手のひらをパッと見せただけでワンコさんが駆け寄って鼻をつけます

最初は掌に美味しいおやつをのせたり、匂いをつけることでクンクン、ってやってきたら褒めておやつをあげます。
だんだん出来るようになってきたら、次のステップです。今度は掌を見せるだけでやってきて鼻をつけたら、また褒めておやつをあげます。
これなら家の中の呼び戻しにも使えますし、お散歩中に苦手な人や犬に出会った時に、ハンドターゲットで犬の見ている方向を変えてもらうことも出来るようになります。

「ハウス」はいざという時とても助かる
クレートでのハウス待機も覚えてもらいたいことの一つです。災害が発生したりした時にも非難の時でも、クレート待機は人と犬のお互いのためになります。これは、次にご紹介するクリッカートレーニングでも教えることが出来ますよ。

楽しく練習する「クリッカー」がおすすめ
練習は普段から犬に楽しい方法で教えてあげておいてください。
クリッカートレーニングってご存知ですか?
これはおすすめです。犬が何か人がしてほしいことをしてくれたらカチッとクリッカーの音を立てておやつをあげるトレーニング方法です。



犬用品で「クリッカー」を探してみると見つけることができますよ。
このトレーニング方法は「してはいけないこと」を教えるのではなく、「してほしいこと」を教えます。
人間社会の中で覚えておくと、犬達の不安が減って安心が増える合図を教えてあげてほしいのです。

クリッカートレーニングのやり方を専門家から教えてもらうのも良いでしょうし、自分で動画などを検索して調べてみるところから始めてもよいかもしれませんね。

 

(5)うちに来てくれてありがとう
終わりに、改めて考えてみると、自分から私をこの家に住まわせてください、ってお願いして暮らしている犬はいないと思います。
人と暮らしている犬は、ほぼ100%人間が望んで、希望して、家庭の中に連れてきたものです。
ですから、犬を叱らないであげて下さい。

犬の暮らすエリアの環境を整え、どうしたらいいのか、根気よく、犬と人が楽しくなるような方法で教えてあげてください。
そして、いつも犬に笑顔で伝えてください。
「うちに来てくれて本当にありがとう」って。

 

本文:

ドッグトレーナー、Tタッチプラクティショナー、カレン・プライヤーアカデミー認定トレーナー
此村玉紀
著書「犬のストレスがスーッと消えていくなで方があった」(青春出版社)

 

 




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