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老犬が歩けない


老犬が歩けない、どうしたらいい?

 

老犬が歩けなくなってきた。歩くスピードが遅い。
愛犬が年を重ね、白髪が目立ち、寝ていることが多くなってきたけれど、食欲はまだあるし、お散歩も大好きだからまだまだ歩くのは大丈夫!

と願うような気持ちで過ごしていたある日…それは突然やってくる。


愛犬の足が震え、歩けなくなる。

あるいは、わずかな距離なのに歩く速さが激減。アリンコくらいのスピードでしか歩かなくなってしまった…

「老犬だから」「シニア犬だから」

で片付けてしまうのは心配ではありませんか?
老犬だから歩けないのか。加齢以外にも何か歩けない理由はないのか。

介護が必要になる前の予防に取り掛かるタイミングです

老犬の歩く問題。家族として何をしてあげるのがいいのか、臨床経験30年の獣医師石川先生にさっそく聞いてみたいと思います!

 


老犬が歩けなく原因とは?

 

さっそく、老犬が歩けなくなる症状や原因について聞いてみましょう。

「そうですね。今獣医学の世界でも、高齢動物が増えてきていることから「老犬が歩けなくなること~介護が必要となる前の予防」についての情報が増えてきています。
つまり人と同じように老犬でも元気で歩くため、飼い主さんが気をつけることについての情報を得られるようになってきました。
その情報を活用しない手はありませんね!」

 

なぜ歩けなくなるのか


では最初にどうして老犬が歩けなくなるのか、考えてみましょう。

老犬が歩けなくなることで、まずあげられるのが年齢による身体の影響です。歩くことに関連しているものとしては

  1. 皮膚の変化 ・・・足の裏のパットが固くなり弾力がなくなる 爪が弱くなる
  2. 筋肉や骨  ・・・関節の質が落ちてくる
  3. 肺や心臓の機能が落ちてくる

歩けないといった変化は少しずつ起きてくるので症状に気づかないことがほとんどです。
散歩が大好きな犬は症状が出にくいなど性格によっても左右されますし、動物は本能的に弱っていることを隠そうとしますので本人が感じていても表面的には見せないようにしてしまうことも多いせいでしょう。

こうした年齢による身体の変化に加え、高齢になると罹りやすい病気で機能が落ちてくることも考えられます。

例えば

  1. 肥満        ・・・体が重くて歩きたくなくなる
  2. 変性性関節疾患   ・・・痛みから歩きたくなくなる
  3. 循環器疾患     ・・・すぐ疲れるから歩きたくなくなる
  4. 甲状腺機能低下症  ・・・覇気がなくなる

などなど

そして上記2つの原因から廃用症候群へつながって、最終的に歩けなくなるという流れになる場合が多いです。

 


歩けなくなる前に・・

 

廃用症候群が、歩けなくなる流れ

犬の廃用症候群。なんだかこわい響きですね!

「人間の介護をなさっている方はよく聞く言葉だと思います。

これは「病気や高齢で安静にすることで体を動かす時間・強さが減り、体や精神に様々な不都合な変化が起こった状態」をいいます。

  1. 廃用性筋萎縮   ・・・筋肉がなくなって委縮すること
  2. 関節拘縮     ・・・関節が固まって動かなくなること
  3. 褥瘡(じょくそう)・・・外からの力で血液循環が悪くなって皮膚などが傷つくこと

など聞いたことがあるかもしれません。

私の経験でも、老犬がまったく歩けなくなるとたった1週間、あっという間に筋肉が目に見えて落ちてきます。びっくりするほどこの廃用委縮は早いです。

 


もう歩きたくないワン!

 

老犬のために家族が気をつけたいこと

廃用症候群に陥る前に、気づくことが大切です!
老犬期に入ってきたなと思ったら、歩く=運動を続けることを意識しましょう。

運動と言っても犬によって体力も能力もライフスタイルも違ってくるので一概にこれをしましょう!とは言えません。

リハビリテーション専門の獣医師は

・無理なく続けられること
・いつも同じではなく日によって変化をつけること


が大切だと言っています。

具体的にはやはり散歩が一番でしょう。これは犬によって違ってくる体力の差を考えなくてもよい、すぐにできる運動です。

歩くために使える便利な犬用の介護用品もいろいろ出てきています。
犬は後ろ足から弱ってくることが多いので、介護専用の胴輪で支えてあげるだけで歩くのがとても楽になります。サイズも多種出てきているので選ぶことができます。

後ろ足が弱っている老犬で家の中で運動させるには、柔らかいボール(100均で売っているようなもの)を使うのがお勧めです。
食餌の時の負担を軽くするため、食器を高くしてあげることを実行されているご家族も多いと思います。
老犬の食餌と同時にお腹にちょうど良い大きさのボールを入れてあげると食べている時間を利用した筋トレにもなります。
私の19歳になる犬でも、このボールを使った筋トレは重宝しました。

 


後ろ足が弱ってる犬には柔らかいボールでトレーニング

 


100均で売っているようなボールで十分です

 

排尿を家でする場合、外の場合

排尿はやはり下半身のサポートを考えてあげるとよいでしょう。
先ほど出た介護用の胴輪で排尿・排便の姿勢を支えてあげるのがやりやすいと思います。専用の胴輪がなくても、急いでいるときはタオルをお腹に通して支えてあげることもできます。ただしタオルで支えるとお腹の一部に負荷が偏ってしまうので、毎回は避けたほうがよいかもしれません。

柴犬などの日本犬の多くは、外で排泄するのが好きです。最後の最後まで排泄は外でしたい。その気持ちを汲み取って、抱っこして外に出してあげて、ささえて排泄させてあげたいものです。

日本犬でなくても排泄に関してプライドがある犬も多いです。排泄は決まった場所でしたい、粗相してしまうとプライドが傷ついたような態度を示す犬もいます。
レトリバー系の飼い主さんからよくそんなことを聞きます。
粗相しても気づかなかったふりをしてお掃除だけ済ませる、自然とそんなふうに接する優しい飼い主さんになるようです。」

 


老犬の気持ちに寄り添う事が大切です

 

老犬のお散歩

老犬と歩くスピードなのですが、ゆっくり辛抱強く愛犬の歩くスピードに合わせるのがいいのでしょうか。
フラフラ歩くのはかわいそうでつい、少し歩いたらもう抱き上げたりバギーに入れてしまいます。
老犬のお散歩について、獣医師の立場からアドバイスをお願いできますか?

「まず現時点で犬が何分くらい歩き続けられるかを確かめましょう。

そこから1週間単位で歩く時間を延ばしていきます。犬に負荷をかけるのは若い時ならよいのですが、老犬になってからはデメリットの方が大きいです。そのために1週間単位で歩く時間を伸ばしていきます。

歩くスピードは変化をつけるのが一番です。
犬に合わせてゆっくり歩くのを基本として、ほんの少しスピードアップしてみたり、ジグザグに歩いてみたり負荷のかからない変化を心掛けましょう。

老犬は特に、間違ってもひっぱってはいけません。 辛そうなら抱っこやバギーも有りですが、自分で歩く時間を1分でも2分でもゆっくりと延ばしていく感覚でお散歩してあげましょう。

老犬期では犬が歩きたがらないので散歩の時間が減ってきていることの方が多いかと思います。その場合、関節炎などの痛みがあるかないかを動物病院で確認してもらってから、今現在歩ける時間から変化をつけ楽しみながら歩く時間を少しづつ増やすことがポイントですね。

お散歩していなかった犬も!

老犬になる前から、もともと散歩が嫌いでほとんどしたことがないという方もいるでしょう。そのような場合は、外に出てそこで1m行って帰ってくる、から初めても結構です。歩いたら美味しいおやつをあげる、ものすごくほめて抱っこするなど楽しいことと結び付けてあげてください。
歩いた後にご褒美として抱っこすると、抱っこされたいから歩いてくれるようになるかもしれませんね。

老犬期になったからお散歩を意識し始めるより、もっと若いうちから「うちの子散歩嫌いだから」「小型犬だから必要ないし・・」「散歩に行くと他の犬に吠えるから」と言っていないで、楽しいお散歩の習慣をつけることを意識してほしいと思います。

 


お散歩は愛犬の歩くスピードに合わせて・・

 

<実例> 吠えとお散歩嫌いを克服したミニチュアダックス


犬の散歩って大事なんだなと、私が思った例としてミニチュアダックスの花蓮ちゃん(仮名)がいます。
花蓮ちゃんは散歩に行くとほかの犬に吠えてしまうので、ほとんど散歩に行く事がありませんでした。
でもある日、椎間板ヘルニアを発症して手術。それでも後ろ足のマヒが残ってしまい、歩くリハビリをすることになりました。
そこで家の中で指導された通りやっていたのですが、マヒはなかなか改善されない。
そんな時に吠えることの行動治療相談で、私がご紹介を受けました。

怖くて吠えている花蓮ちゃんのために少しずつ自信を持ってもらう過程で、散歩をさせる項目がありました。
今までほとんど散歩に出ていない花蓮ちゃんに散歩は楽しいものだと思ってもらうところから始めたのですが、なんと!それがリハビリの特効薬になったのです。

今まで家の中で歩いても効果がほとんどなかったのに、少しずつマヒしていた後ろ足を動かして歩くことができるようになってきました。
吠える犬、歩けない犬にとって、自発的に動こうとすることがこんなにも効果があるんだと目を見張る思いでした!

「たかが散歩 されど散歩!」です。
無理せず、楽しく、毎日続けられてその犬に合わせてレベルアップできる。歩くことの効用は計り知れないですね。」

 


無理せず、楽しく。

 

老犬にフレキシリードはNG!

老犬を自分のスピードで歩かせてあげたいからと、自在に伸びるフレキシリードを使う人を見かけます。自在に伸びていく、あのフレキシリードはどうなのでしょう。

「フレキシリードは、特に老犬の場合お勧めしません。
老犬では限界まで伸びきるまで走っていく事はあまりないかと思いますが、何かあった時のフォローが全くできないからです。
老犬の場合は特に、すぐに手を差しのべなくてはならない緊急事態になる確率が高いからです。

普通のリードだったから間一髪で命拾い

私自身、自分の老犬期に入った柴犬を散歩していて、道のわきの崖のようなところに墜落!、という経験があります。目がよく見えていないから注意して散歩していたにもかかわらずです。あっという間の出来事でした。

 

反射的にリードでグッと引っ張って落ちる前に戻してあげることができました。
今でもあの時のことを考えるとドキドキします。
タイミングがよかったから助かったけれど、下手をすれば首をつってしまっていた。もしフレキシリードを使っていたら完全に墜落です。命を落としていたかもしれません。

 


老犬にフレキシリードはNG

 

老犬、まだ元気だけ今から気をつけたいこと

老犬の飼い主様にお伝えしたいことはとてもたくさんありますね。今はまだキビキビ歩いていても、気をつけたいことがあります。

  1. 肥満させない
  2. 足腰に過度の負担を掛けない
  3. 適度な運動を毎日行う

その3つは外せません。

先に書いたように、毎日のお散歩の習慣は必ずつけておくとよいでしょう。
肥満傾向の犬はお散歩も行きたがらないことが多いです。このような悪循環を今のうちに断ち切っておきましょう。

老犬の足腰の負担を考えると、家の中の床の素材を見直すことも必要です。
すべる場所はないか、踏ん張ることができるか、要チェックです。
床材を変えなくてもOK! ジョイントマットを敷いてあげればインテリア的にもなじみますし、経済的です。
老犬介護 その時のために何を備える』の項目で詳しくまとめてあります。

 


まだ元気なうちから取り組んでおきましょう

 

老犬との暮らしは知識を得て実践!

老犬期は、一般的に7歳を超えてからといわれます。
犬の寿命も延びて15歳と聞いても驚かない時代です。あなたの愛犬のため、是非とも知識を得て安心な老犬ライフを送らせてあげてください。」

 

本文:獣医師 石川安津子




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