老犬介護 その時のため何を備える?

人間で言えば愛犬の年齢は何歳くらいですか?
毎日元気に飛び回っていた愛犬も、幾つかの季節を一緒に過ごし、気づけばあっという間に人間の年齢を追い越していきます。
なぜなら 犬はヒトの4倍の速さで生きているからです。犬の1年はヒトでいえば約4年分と考えられています。
これから老犬になる飼い主さんも、すでにサインが出ている飼い主さんも、何をどう備えたらいいのか、見て見ましょう。
老犬のサイン:外見と行動
老犬に近くにつれ目に見えて次のようなサインが出てきます。
鼻の周りや目元に白髪が出てきます。
だいたい5〜7歳から出てくるようですが、人間にも若白髪があるように個体差があります。
筋肉の張りがなくなってたるんできたり、毛並みもパサパサしてきます。
筋肉や皮膚のたるみでやがて骨が目立ってくるようになってきます。
また、これまで通りのフードを与え続けると肥満になっていく犬もいます。
シニア犬用のフードに早めに切り替えることで肥満を防ぐことができます。

あまり活発に動かなくなり姿勢が悪くなってきます。
尻尾もブンブン振っていた若い頃と違い、だらんとしてきて振り方も緩慢になってきます。
1日のうちで寝ている時間が増えてくるのもこの頃です。
完璧だったトイレも失敗するようになってきます。
頑固、攻撃的、あるいは認知の症状が出てくることもあります。
老犬のサイン:体調や病気
当たり前ですが年をとるとすべての臓器の働きが衰えてきます。また病気に対する抵抗力も落ちてきます。
例えば・・・
定期的なデンタルケアや歯石除去を行っていないと、歯石がたまり口臭が強くなってきます。歯肉炎のため歯が抜けてしまう場合もあります。

視力が低下してきたり、また眼の病気にかかりやすくなってきます。たいていの場合は視力の次は聴覚の順番で、耳も聴こえにくくなってきます。
嗅覚だけは最後まで残ると言われていて、失われていく視覚や聴覚を補う役目を担います。
足腰の弱体化や病気は、犬の体質や病歴によって異なってきます。
もともと股関節形成不全や膝蓋骨脱臼などの病気を持っている犬は、骨関節炎が進んできます。
そういった病気がなくても、関節軟骨が年をとると変質してきて慢性の関節の病気を起こしやすいものです。
足腰が弱くなったと思っていても、関節の病気があって痛みのため動くことが少なくなって筋肉が痩せてきたのかもしれません。
ヘルニアがある場合も、筋力が低下することでこれまで補っていたバランスが崩れて悪化しやすくなってきます。
心臓や胃腸など、元々の体質によって加齢が進むことでもともと丈夫ではなかった機能から病気にかかりやすくなってきます。
サインが出たら早めに「動物病院」が、その後を変える

以上のような様々な変化や症状を、「歳だから」と諦めてはいけません!
病気の症状を年よりだからだと思いこむことが多々あるように思います。
加齢からくるものなのか、病気からくるものなのかの判断はなかなか難しいものです。
シニアになったら定期的な健康診断をお勧めするのはそのためです。
サインに気づいたらすぐに動物病院に連れていきましょう。
意外に知られていないようですが、老犬の健康上の心配も、行動の問題も、まずは獣医さんです。
進行をできるだけ遅らせることで、愛犬の健やかな日々を延長することができるばかりでなく、
症状が重くなる前に手を打つことで、医療費を大幅に抑えることができる可能性が大です。
今からなし備えれば憂い!
あなたの愛犬は シニアまであと何年かって考えたことがありますか?
その時あなたのライフスタイルは今と変わっていないでしょうか?
考えてみましょう。

まずシニアって何歳からでしょうか。諸説ありますが一例として
♢ 小型犬 チワワ・トイプー・ダックスさん・・・12か13歳こえたら
♢ 中型犬 柴・ボーダー・シェルティさん ・・ 11歳こえたら
♢ 大型犬 レトリバー ・・9歳こえたら
さあ、あなたのワンちゃんは今何歳であと何年後にシニアの仲間入りしますか?
その時のあなたの状況やワンちゃんの姿 思い浮かべられますか?
その何年後のために 今から始めましょう!
(1) 心から信頼できるかかりつけの先生を見つけること
若い健康なうちからかかりつけを見つけておくと シニアになっても安心です。
愛犬のことを健康なときから診続けてくれているかかりつけの先生は、何か些細な問題があったときに
もそれが病気なのかそうでないのか判断してもらえます。 どんな名医でも初めての犬をひと目見てすべてを把握できません。
(2)体中どこでもさわれるようにしておくこと
シニアになれば必ずどこかに何かの故障が現れることがあります。でも触らせてくれなかったら それを確かめることができません。
いちばん重要なしつけのひとつがこれなのはそのためです。
デンタルケアも重要な「備え」です。

老犬になっても健康に長生きするには歯周病予防は大事な鍵です。仮に歯周病で歯が抜け落ちても、犬は丸呑みで消化可能な動物なので、極論歯が何もなくても支障ありません。
それよりも歯周病は慢性の炎症が他の臓器に与える影響が一番の問題です。
(3) 定期的な健康診断
病気の予防のためにも、人間ドックならぬドッグドックを受けましょう。
あらかじめ、愛犬の健康状態を把握しておくことで様々な疾病を予防することができます。発病してから「そんなところが弱かったのか!」と知るよりもあらかじめの予防が何よりも大切です。
元気で活発なうちに、質のいい筋肉と丈夫な骨を。
お散歩を始めとした運動と毎日のフードが健康な体の土台を確固たるものにします。
(4)最後に食餌について
ドッグフードは愛犬が毎日体の中に取り入れるものです。
毎日毎日何年も同じドッグフードのみを与えることはよくないことがわかってきています。
仕事や育児で忙しい!という場合でもフードの工夫はできます。

ドライフードにプラスして、人間用をおすそ分けなら簡単!
サラダに使う生野菜の一部、調味料をつけないままトッピング。
人間用に買ってあるお豆腐や納豆を少しだけ乗っける。毎回である必要はありません。ストレスに感じない程度に分けてあげましょう。
医療費も備える
これまで病気知らず、予防接種以外は動物病院にかかったことがないという愛犬だとしても、高齢になることで獣医さんに連れていく機会がでてきます。
上記で挙げた「備え」を万全にしていても、早めに連れていくとしても、医療費は必ずかかってきます。
また、医療費の他にも、足腰が不自由になったり寝たきりになることで、もしかしたら犬用の車椅子や、 犬の大きさによっては床ずれをサポートするための機器など必要なものが出てくるかもしれません。
家族のスケジュールによっては、老犬ホームという選択肢を考えることになるかもしれません。
あと何年でシニアになるのか考えて計算してみましょう。

その年数分ちょこっと積立をしてあげるのも安心です。
たとえば、5歳の柴犬たろう君はあと7年でシニアの仲間入り、毎月1000円タンス預金するとシニアの仲間入りのときには8万円ちょっとの備えになります。
こんなふうに一度家族でシュミレーションをして、どれだけ金銭的な備えをする必要があるのかを把握しておくことをお勧めします。 今は民間の動物の保険もいろいろありますので、検討してみるのもよいかもしれません。

いつかは来るあなたの大事な家族、愛犬の最期。後悔のない終生飼育のために今から備えましょう。
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本文:犬と暮らす主宰 武田裕美子
病気解説と監修:獣医師 石川安津子