犬の反省が可愛すぎるけど、イタズラはやめない
犬がイタズラしてバレた!
うんと叱ったその時、
愛犬の反省する姿があまりに可愛くて、
思わず写真や動画を撮ってしまったことはありませんか?
犬が反省している時の可愛い姿を思い出してみると…
上目遣い、横を向いちゃう、なだれてショボーン
なんて可愛いんだろう!!
それならまだいいのですが、反省どころか
「うちの愛犬はあくびした!!」
「目をそらした!そしてまたイタズラする!!」
全く反省の色がな〜い!!
という声も聞こえて来ます。
反省しているくせにイタズラをやめないなんて、甘やかしすぎなのでしょうか。
それとも人間を馬鹿にしている? その両方?
「犬が反省した」のはショボーンとした態度が証拠?
犬を叱って、「反省」させたことがある、と思い当たる方。
その証拠にその後、イタズラをしなくなりましたよ!
という場合から、考えてみましょう。
「反省」して、もうイタズラしなくなった場合、次のことは当てはまりませんか?
- 届くところにイタズラの対象物を置かなくなった
- 目を離している時、犬がイタズラできないように行動を制限した(サークルに入れる、部屋を変えるなど)
- その他の管理
まずイタズラをさせないための、とてもいい対策だと思いませんか。
危険なイタズラであれば、こんな怖い話がありました!
「愛犬が、リモコンの電池を上手に取り出して、前足で抑えてコリコリ噛んでいたのです!
もう怖くて、リモコンは高いところに置くようになりました!」
この方は特に叱りもせず(なので犬は反省もせず)
イタズラを回避したことになります。
…と言うことは
あなたがうまく行ったのは、もしかして、犬は反省したのではなくて、
私たち人間がイタズラできないように良く管理するようにしたに過ぎないのではないでしょうか。
では
犬がまた繰り返し同じイタズラをする場合を思い出してください。
そもそも届かないように管理をしていたでしょうか。
つまり、叱って反省させなくても管理をすることでイタズラを回避できませんか?
可愛いと言って、ときには写真撮ってSNSに載せられるワンコ
それは反省でなかったら一体何なのでしょう。
犬が反省している姿の正体
それじゃあ犬の反省と躾は一体どうなるのか。
「犬の反省」はうわべだったのかどうかを考えてみましょう。
ショボーンと肩を落として上目遣い。時には目に涙をためてしまう。
こんなに反省して〜、と思ってしまいますが、ちょっと待ってください。
上目遣いや肩を落とす、これは人間が反省するときのポーズ。
ですが、そもそも犬は人間とは「種」が違います。
人間なら反省の表れ、が、犬の場合は全然違うボディーランゲージなのです!
反省に見える態度、行動学では「ストレスサイン」に当たるのです。
可愛い、あざといと思うあの上目遣い:
犬はストレスを感じた時、白目を見せます。上目遣いで可愛く反省のポーズをしているように見えますが、実はストレスでいっぱいなのです。
ショボーンとうなだれる姿:
犬が頭を下げるのは、「恐れ」と「威嚇の回避」です。お願いだから、攻撃をしないで!と訴えているボディーランゲージです。
ちょっとネット検索で、叱られている犬の動画を探すと思い当たることが出てきます。
「誰がやったの?」
「犯人はお前だな〜」
「反省してもダメだぞ〜」
と、飼い主が追い詰めているような動画が多くありませんか?
飼い主は、可愛いと思っていたり反省させようとしているのでしょうが、犬はストレスをこらえ、必死になって人間からの「威嚇を回避」したいと願っていたのです。
こうなると、目に涙が溜まってくることもわかってきますね。
いつもは優しい飼い主が、怖い声を出す。目をそらさずにじっと直視しながら圧のかかった声で部屋の隅まで追い詰める。
これにはストレスがかかるわけです。
アクビをする犬もいます、目をそらすこともありますが、これも全てストレスサインの代表格です。
それはイタズラしたのだから叱られてストレスがかかるのは当たり前、仕方ない!
叱らないと躾にならないじゃないか!! と思われますか?
犬は反省しているのか
例:
ちょっと別の部屋に行っている間に、大きな音が!
犬のいる部屋に入ってみたら、犬がテーブルクロスを引っ張って床に落としていたのです。上に置いてあった食べ物も飲み物も床に散乱している。
なのに、愛犬は部屋の隅で伏せをしていて、入ってきた私に尻尾を振って寄って来た。
かなりハッキリと叱ったのですが、犬は反省するのでしょうか。
当サイトを監修されている、行動治療専門の獣医師(日本獣医動物行動研究会会員)、石川安津子先生に聞いてみました。
「うーん、
反省していないでしょうね〜」
あっさり言われてしまいましたが、
石川先生は、以前のオリジナル記事「なぜ体罰を勧めない専門家が増えてきているのか」でもこう書かれていました。
「やめてほしい行動をしたら1秒以内に罰する」しかも「罰は強すぎれば怖がらせてしまう」
犬は、今を生きるどうぶつです。
さっき起きた出来事、それはそれ。
伏せをして休んでいる頃、それが「今」なんですね。
この例のように大切なものを壊されてしまった時、「よくも〜!」とばかりに追いかけて叩く…
「でも上目遣いで反省しているのを見ると、叱る気力がなくなっていく。
だから、いつまでたっても治らないのよね」と、この方は困り果てていますが、どうしたらいいのでしょう。
「そもそも、犬は人間が言うところの”反省”はしないです」
と、石川先生。
犬は自分の行動の結果、嫌なことが起きるとその行動をしなくなります。いいことが起きれば、またその行動をします。
この時の「自分のどの行動」の結果なのかを、犬が理解することが第一歩です。
では、犬の側に立って再現してみましょう。
- 犬はまず、テーブルクロスを引っ張った。
- すると、テーブルクロスと一緒に乗っていたものも落ちた。
食べ物、飲み物、食器が床に散乱した。 - その場を離れて伏せをしていたら、飼い主さんが部屋に入ってきた。
- いつものようにそばに寄って行った
- 「きゃー!!」と大声を出し叩こうと追いかけてきた。
犬には、一連のプロセス、特に最後のオチを理解するには複雑すぎるのではないでしょうか。
しかも、飼い主さんが部屋に入った時すでに終わった行動(テーブルクロスを引っ張った)は、
叱られたところで、何をさして怒っているのか犬にはもうわかりません。
わかるのは、いつもは優しい飼い主さんが、鬼の剣幕で大声を出しながら自分に暴力を振るおうと追いかけてくること。
その結果、犬は頭を下げて思わず顔をそらす。
イタズラするのは自分の方が上だと思っているから?
であれば、犬は一体なぜイタズラを繰り返すのでしょう。
人間を馬鹿にしているから?
自分の方が上だと思っているから?
いえいえ。犬は自分の方が上だなどと思いません。
行動学上も言われています。
「そもそも、犬はヒトが違う種であることくらい
わかっています!」
では、躾が足りないから?
完全な答えは、わかりません!
と石川先生。でも、いくつか近い推測はできるのですよ。
あなたの愛犬はいつもイタズラをしますか?
お留守番をしていないときでも何かを破壊しますか?不適切な排泄をしますか?
どんな時に、イタズラをするのか。
どんな時ならイタズラをしないのか。
それは留守番中か、私が目を離している時が一番多い。
やっぱり、きっと困らせようとしているに違いない!と結論に走る前に考えましょう。
犬は、ある行動をすることで「いいこと」が起きればもっとやる。
人のように困らせよう、腹いせに…なんて考えずに単純明快に「いいこと」が起きるからやっているだけなんです。
ある時、突然イタズラする
主宰の愛犬はまだヤンチャなパピーだった時、洗面所に行って、かけてあるタオルを取り、ビリビリにすることが時々ありました。
いつもではありません。
そう… ちょっと相手にしていない時、遊んで欲しそうにするのに忙しくて構ってあげない時によくやりました。
しかし、何枚ものタオルが穴だらけになっているわけですから、やられれば手を止めてすぐに「こら〜!」とタオルを取り上げるために追いかけに行きます。
愛犬にとって、実はこれが遊んでくれている「いいこと」になってしまっていたんですね。
獣医師の石川先生をはじめ、犬の専門家からのアドバイスを仰ぎ、
そしてそれ以来、
「楽しい」
「遊んでくれている」
と思われないように静かに、ゆっくりと歩み寄って取り上げるようにしました。
イタズラの対策:まずは観察
さらに、どんな時にタオルを引き裂く行動に出るのか、予想できるようになりました。
ちょっと退屈が爆発しそうな感じになったとき、思い通りにならない感じを出し始めるのです。
それは、忙しいから愛犬と向き合う時間がほとんどない時。
長い留守番から帰ってきてすぐ、何かを急いでやっている時。
愛犬が可愛くないわけではありませんが、止むを得ず、急いですぐに何かをしないとならないときはありますよね。
それ以外にも、雨が続いてお散歩に全然連れて行くことができない日が続いた時。
長いお留守番ばかりが連日続いた時。
愛犬は突然、何かの拍子に八つ当たりをするかのようにタオルに飛びつく。
そこで、早朝や夜更けしか家にいない日も欠かさずお散歩に行くようにし(タオルだけの理由で散歩するわけではないですが)、もうタオルが届かないように高いところに片付けました。
それに洗面所のドアはいつも閉めるようにしました。
一方で、タオルを引っ張らないような躾をしようとは思っていません。
なぜかと言うと…
本当のところ、なぜ愛犬がタオルに飛びついて引っ張り、引き裂くのかがわからないからです。楽しいのか当たり散らしているのか。
理由がわからないなら、「反省」させようとして叱ることはできません。
できるのは、
どんな時にイタズラするのか観察し、
その状況が起きないように工夫し
さらにはイタズラできないように管理する
こうしたら、反省とかイタズラとは無縁の、一緒に過ごす穏やかな時間が生まれます。
拡散はやめよう
犬に大声を出すと、しょぼんと肩を落とす。
目に涙をいっぱい溜める。
とても可愛いです。
可愛いけれど、愛犬はその時決してハッピーではありません。
人間が思うところの反省をしているのではありません。
理由もわからないまま、ストレスに耐えているのです。
そのストレスを与えているのは、ほかでもない飼い主。
それはあまりではないのか。
ですからどうか、「反省する愛犬、可愛いでしょう」と拡散することをしないでほしいと願うのです。
確かに面白いし可愛いものですから、人間の目線だけで
「あざと可愛い上目遣い」などと、多くの人が受け取り、実は犬がストレスに耐えていることを知らずに、誤った印象が広まってしまうからです。
一緒にいる時、愛犬にはストレスを感じないで穏やかなハッピーな気持ちでいてほしい。
それは誰もが持つ願いではないでしょうか。‘
本文:犬と暮らす主宰 武田裕美子
監修:獣医師 石川安津子