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愛犬の目が見えなくなったとき

愛犬が視力を失ったらどうなってしまうのだろう。老犬になればみんな目が見えなくなってしまうのだろうか?もしそうなったら、何に気をつけてあげればいいのでしょう。

ここでは、6つに分けて愛犬の失明に直面したご家族のお役に立つ情報をまとめています。

 
 

視力を失うとき

ある日突然、視力が落ちた犬を散歩させた時のことは忘れない。ジンジャーというポメラニアンでした。
いつもの出口から外の視界が広がった場所に出た途端、ジンジャーはハッとして呆然というようにしばし固まった。

体調が悪いのか、足が痛いのか?と思ったその時、段差につまずく
そのあとたて続けに物にぶつかりました

「もしかして、見えないの?」

昨日までは大丈夫だったいつもの道。
たった1日ですっかり目が見えなくなってしまったようでした。

ジンジャーは未だシニアとは言えない年齢だったけれど緑内障を発症してしまった保護犬で、すでに片目を摘出していました。そして残された目もついにこの日、失明してしまいました。

 
 

嗅覚と聴覚、動体視力で失明を乗り切る犬たち

ジンジャーは数日もすると、散歩の道を全て視力がなくてもこなす術を身につけました
これまで視覚に頼っていた分、記憶を頼りに段差の位置や、体の側面を這わせるようにして歩くことができる壁の場所を覚えて、以前と同じようにタタッと散歩するようになりました。

ジンジャーが過ごしていたシェルターでは失明した老犬が何頭かいました。
もう若くはない老犬は日中のほとんどを居眠りして過ごし、嗅覚と聴覚でどの辺に誰がいるかを把握し、しかもまるで子犬のように、大好きな人間がそばに来ると、まっすぐ寄っていってクーンクーンと顔を擦り付けて甘えていました。

人間よりも圧倒的に優れた嗅覚と聴覚があるから、犬は私たち人間に置き換えた場合よりも他の感覚が視力をカバーしてくれるといいます。
とは言え、愛犬がシニアになると視力を失うかもしれないならば、そのよくある病気と予防策を知っておけば、備えることができますね。

 
 

老犬はなぜ視力が衰える


加齢に伴ってかかりやすい眼の病気はいくつか挙げられます。それは眼を守る涙の分泌をはじめ、高齢になることで視力に関わる機能が衰えてくるからです。

一番多く見られるのは乾性角結膜炎マイボーム腺機能不全、眼瞼腫瘍でしょう。これらは失明にいたる疾病ではありませんが、視力が落ちる可能性があります。

失明することが多い疾病としては白内障があげられます。病気の詳しい説明は文末をごらんください。

以上は老犬が加齢により視力が衰えるケースを挙げましたが、未だシニアになっていない犬でも目の病気を発症する場合があります

なぜなら若い頃からの異常が続いて、高齢になってから視覚障害を起こすこともあるからです。例えば遺伝性疾患である進行性網膜萎縮症の他、緑内障、色素性角膜炎などです。また他の病気から二次的におこる眼の病気もあります。
(病気の詳しい説明は文末へ。)

何れにしても、目が白濁しているなど眼の異変や、以前は大丈夫だった場所で物にぶつかるなどの異常を感じたら、すぐに獣医さんに連れて行きましょう。

 
 

今からできる予防策

老犬のサインが出始める前から、視力を失いにくくなるように、こんな予防策を取ることができます。

1)普段から清潔に:眼のケアに慣れていてもらう
目ヤニや涙やけができてから急に眼のお手入れをし始めると、痛みを伴いやすいのでとても嫌がります。

痛いから嫌がる→無理に拭く→いやがって目の周りに触れさせなくなる
の悪循環におちいる前に健康なときから全身どこでも触らせてくれるようにしておくと良いでしょう。

2)眼の奥の筋肉を使う運動を
シニアになったら特に、目を使う遊びを。すぐそばでボールを転がしたり玩具を素早く動かしたりして、眼の奥にある筋肉を鍛えてあげましょう。

短頭種の犬は目に注意!
大きなお目々が愛らしい短頭種ですが、その分眼の問題も起こしやすいです。
日頃から眼のチェックを忘れないとよいでしょう。以下の時はすぐに病院へ!

イ)いつも目やにが出る  
逆さまつげの可能性があります。そのままにしておくと色素性角膜炎に移行するので放置しないほうがよいです

ロ)眼の表面の色が違う(赤い・白い・まだら・緑っぽいなど)
   眼の病気の恐れがあります

ハ)眼の大きさが違う
   緑内障や腫瘍の恐れがあります

 
 

視力が衰えた愛犬との過ごし方

愛犬の目が見えなくなることは、飼い主さんにとってもとても悲しく寂しいものですね。でもそこは悲しいと思いすぎないで、愛犬への優しい想いで包み込んであげたいものです。
なぜなら、悲しいという気持ちは犬にも通じるからです。犬は飼い主さんの気持ちを読む動物です。

大好きなパパさんやママさんが辛い気持ちを抱きすぎると、自分のせいで悲しませていると感じてしまいます。逆に、「見えなくても明るく一緒に暮らそうね」という暖かい気持ちは大切な愛犬に安心感を与えるものです!

視力が衰えてきたと感じたら、家の中のレイアウトは愛犬が歩き回ってもぶつかりにくいスッキリした家具の配置にしましょう。

多くの高齢犬の核硬化症(白内障のように眼が白くなってきた時)は、ぼんやり見えている状態です。
急に目の前に何かが現れたりすると驚きます。

急な動作は避けてあげましょう。

また夕暮れから夜は見にくくなってきます。
お散歩は明るいうちに行くとよいでしょう。

完全に見えなくなっている場合は、家の中の大きな家具の位置などレイアウトの変化は避けましょう。
目が見えていた時の位置の記憶で愛犬は動いています。例えばソファーの位置が変わってしまうと混乱してしまうかもしれません。
ぶつかると危ないと思われるもの、尖った角などがある場合は弾力性あるカバーをつけるなどして丸みをつけます。

また、老犬は足腰も弱くなっている場合もありますので、段差にはマットなどでカバーするなどしましょう。階段での移動がないように、一つの階だけで常時過ごすとよいですが、できないときは抱っこして階段の昇り降りをしてあげましょう。
自分の足腰が弱っていることを、犬は自覚できないことも多いです。登れるつもりで途中で足をぶつけたり、降りようとして階段を落ちたりすることもあります。転ばぬ先の杖になってあげましょう。

多頭飼いや猫など他のペットが同居している場合、鈴をつけることで仲間がどの辺にいるのかわかり、室内外で助けになるというアイディアもあります。
同居ペットの性格や相性に合わせて工夫するのもいいかもしれません。

飼い主さんの愛情が、愛犬には何よりの幸せです。
はっきりとした声で名前を呼んで、スキンシップをしてあげましょう。
視力以外の全ての感覚を使い、愛犬はあなたの声で、触ってくれる手で、においで愛情を一身に浴びることで幸せな気持ちでいっぱいになります。

最後に…
視力を失った愛犬と安心して暮らせるための方法として、しつけや自然療法のプロに相談するという道もあります。え?しつけ?と思われるかもしれませんが、実は犬のことを勉強し、実際に飼い主として多くの愛犬と過ごしてきたプロは、目が見えなくなったワンコさんと快適に過ごす知識もあって、とても頼りになる存在です。
気になる方は、「犬のプロに相談」へ!

 
 

病気の解説


■ 高齢で発症する病気

乾性角結膜炎:
涙の分泌が減ったり無くなったりして起こる目の炎症です。
年寄りになったから目ヤニが多くなったな~と、病気だと思わない場合が多々あります。目の表面の保護をしている涙が無くなるので結膜炎や角膜炎・潰瘍を起こしやすくなります。

マイボーム腺機能不全: 
同じく年寄りになったら涙やけがひどくなったと感じる方も多いと思います。これは涙の油成分を分泌するマイボーム腺が萎縮したり開口部が塞がったってしまって涙がサラサラ過ぎて目の上に留まっていられない状態になるからです。留まれないので目からすぐ溢れ出て涙やけをおこします。さらに上記の乾性結膜炎に移行することも多いです。

白内障:
水晶体(目のレンズ)が白濁する疾患です。原因は老齢性の他にも多々あります。まだ若くても目が白くなったと思う場合多くは老齢性の白内障ではなく水晶体の核が硬化しただけの「核硬化症」であることが多いです。とはいえ失明しない核硬化症か失明することのある白内障かは診察してもらわなくてはわかりませんから受診をおすすめします。

■ 若年でも発症する病気

色素性角膜炎:
慢性の目の炎症(逆さまつげなど)によって角膜が黒くなってしまう病気です。短頭種のパグやシーズーなど眼瞼の露出度が大きい犬に多く、特に老齢期になると黒いところが広がって見えにくくなるので、若い頃のケアが必須です。

進行性網膜萎縮症:
目の奥の網膜の病気です。
遺伝性疾患でラブラドール・レトリーバー、シェルティ、ミニチュアダックスフント、ミニチ ュア・プードルなど、数十犬種が明らかになっています。 
若い頃発症し夜見にくくなることから始まります。病気が進んで最終的に失明したり、 白内障になって失明する場合もあります。

緑内障:
眼の中を循環している水が溜まってしまい、眼の圧力が異常に高くなる病気です。目が大きくなったように感じます。通常片方の目に発症し、後にもう片方の目に発症して完全に失明してしまうことが多々あります。

■ 二次的におこる病気

糖尿病 → 白内障になることがあります
腎臓病・心疾患 → 高血圧のためにぶどう膜炎・緑内障・網膜剥離を起こすことがあります

 

本文:犬と暮らす

病気解説と監修:獣医師 石川安津子

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