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犬の吠える悩みを解決したい 〜要求吠えにアプローチ 〜

犬の要求吠えとは

犬にもし言葉がわかるとして、
「どうして吠えるの?」と聞いたら
真っ先に「吠えると、〇〇してくれるから」
という答えが帰ってきそうです。これが、要求吠え。

さて、「犬の吠える悩みを解決したい」シリーズ第3回。
前回に引き続き、臨床経験30年の動物行動専門の獣医師、石川安津子先生、「要求吠え」とこれに続き「クールダウン」の解説です。

うちのコは今回アプローチする「要求吠え」に該当するの?
を確認したい方は、第1回目の「犬の吠える悩みを解決したい 〜原因編〜」(タイトルをクリック!)をぜひチェックなさってみてくださいね。

犬はボディ・ランゲージ(行動で気持ちを表現する)を使うことが多いのですが、コミュニケーションの手段として「吠える」も当然これに該当します。
そして、これがまた人間に効果があること、すぐに学ぶんですよね。
   吠える → 自分のやりたいことがかなう
そうしたらドンドン吠えがひどくなるのは当然です。

 

要求吠えへアプローチの原則 その1

吠えているときは犬の要求(してほしいこと)に従わない

これですべての要求吠えは無くなります。問題解決です。断言できます。
…と、終わりにしてもよいのですが!そうは行かないから悩むわけです。

犬が食餌の前に吠えるのは、吠えれば食餌がもらえるから。
ケージやクレートに入れて吠えるのは、吠えれば出してもらえるから。
人の食事中に吠えるのは吠えれば美味しいものがもらえるからで。

そうしなければよいのはわかっているけれど、うるさくて(かわいそうで? 可愛くて?)つい要求に答えてしまう…。

そして要求に答えなければすぐに吠えるのをやめてくれる期間はとても短く、気づいた時にはすぐにやめてくれない段階、対応がもっと複雑化している段階なので皆様悩むわけです。
困る前に気がつけばよいのですが、気づいたときには後の祭り…。

さあ、そこで今回は複雑になった対応を紐解いていってみましょう。
それが要求吠えのアプローチになります。


吠えても絶対に要求が叶わない状態を作る

行動学上、「吠える」→「要求がかなう」という行動を消去するには、要求がかなうという「報酬(犬にとってよい出来事)」を0%にすること。つまり、よい出来事を100%与えない状態が必要です。

ここで飼い主さんがひっかかる落とし穴なのですが、時々根負けして要求を通してしまうこと=「吠えても良い出来事が起きる可能性0%」ではなくなることです。

『要求をかなえたり、かなえなかったりすること』

それが複雑になった原因です。
99回叶えなくても1回叶えてしまったら振り出しに戻る。さらには振り出しより後退してしまうと思ったほうがよいでしょう。

実際に私がご担当させていただいたケース。よくある風景です。

<トイプードル(3才男の子)のクウちゃん(仮名)のケース>
クウちゃんは、家族が食事を始めると吠え始めます。人間の食べ物をあげると吠えやむ。でもまた吠え始めるの堂々巡りでした。
そこで飼い主さんが一念発起して、吠えても人間の食べ物をあげないことに決めました。
一緒に住んでいるご両親にも説明して絶対にあげないように頼みました。

食事中、いつものようにクウちゃんが吠えます。
「ダメダメ!ここであげるから吠えるんだ」
とみんなで無視して黙々と食べ続けます。するとどうなるでしょう?

クウちゃんは今までかなっていた要求が通らない…

そして、さらにひどく吠えます!
無視したのに吠えている、無視しても吠える、無視してもどんどん吠える、
さらにひどくなった!悪化した!無視しても効かない???

ついにお父さんが、「うるさい!無視しても前よりひどく吠えるじゃないか!効かない!!」
とうとう美味しいものをあげてしまいました。

さあクウちゃんはどう思いますか? 
「ちょっと吠えただけじゃダメなんだ。もっと一生懸命吠えれば美味しいものがもらえるんだ」
となってしまうわけです。
結局クウちゃんの飼い主さんは、「親があげてしまって、吠えるのをやめてくれません」と悲しそうにご報告してくれました。

今まではもらえていたのだから、吠えてすぐにもらえなくてもさらに吠え続けます。
吠え続けたらもらえたら、次は吠え続ければもらえると思うわけです。
それでももらえなかったら吠え方が弱すぎたかなと思ってさらに大声で吠え続けます。
根負けしてあげてしまうと、その次は更にひどくなっていく…

この悪循環にクウちゃん一家はおちいってしまいました。

もうこれは、負のスパイラル…
吠えているときはあげない!と決めたら100%あげてはいけません。時々負けてあげてしまうことは吠えることを逆に強めることになります。

クウちゃんの例のように要求をかなえたりかなえなかったりを繰り返して更に悪化させる飼い主さんがほとんどのような気がします。そこで…第2の原則に行きましょう。

 

要求吠えへのアプローチの原則 その2

絶対に要求に屈しない覚悟を決める

できますか?  
もちろんご家族全員の覚悟も必要です。

「悪化」から「無くなる」行動学の解説
今までの行動を「消去」するには報酬を与えないことです。
動物行動学という、科学の観点から考えてみましょう。
行動学上、「一時その行動が悪化する」、それから「その後その行動がなくなる」ということがわかっています。

だから吠えることがひどくなったら、むしろ
「しめしめ、消去の過程を通っている証拠だ!!もうすこしだ!」
とご家族で確認しあって、もうひとがんばりその態度を押し通してください。最後の一山越えたら成功です!もう少しです!

要求吠えのあらゆるシリーズに対応
この一度は「悪化」、その後「無くなる」要求吠えは食事のときの例でしたが、以前のオリジナル記事、「犬の吠える悩みを解決したい 〜原因編〜」(タイトルをクリック!)で出てきた以下の項目
6. 犬の食餌の前に吠える
7. ケージ・クレートに入れた時吠える
8. 人の食事中吠える
6~8すべてに当てはまります。
犬を変えようと思うのならまずあなたが覚悟を決めなければいけません!


その上で以下の対応をしてみてください。

6. 食餌の前の要求吠え・・・吠えている時はあげない、片付けてしまう
             吠えるのをやめたらあげる

7. ケージ・クレートに入れたら吠える
これはクレートトレーニングを一からやり直すことで解決しますよ。 
「吠えていない時に出してあげる」という問題ではありません!

さて、前述の食事中に吠える<クウちゃん>
願いを叶えない、を実行し始めたら悪化してしまったのは行動学の解説の通りでした。
でもお父さんがあげちゃったんですよね。

その後のお話です。
クウちゃん一家では、お食事中は別室にいてもらい、コングのようなもので少しずつ時間をかけて犬の方も食餌、ついには解決しました。
「なあ~んだ」って思われますよね。
この方法が人にも犬にもいちばん簡単な解決法かもしれません。

それでも根気が続かない時は
人間なかなか変われません。意志が強い人の場合、おそらくこの問題で悩んでいないと思います。
そこで最後にご提案
「1人でやろうとせず 仲間を見つける」ことです。

犬の好きな友人に宣言、経過を報告して叱咤激励してもらう!

私の友人でボーダーコリーを飼っていらっしゃる方がいました。
犬が大好きで、ついつい人の食べ物をあげてしまい肥満傾向に。
彼女は私に話すことでこれを乗り切ったって教えてくれました。
「だって時々会うたびに
『太ったね~』
って言われるんだもの。そのたびにドキッとして続けることができたのよ」
こんなふうによく会う友人が効果的ですね。

SNSをしている人ならSNSで宣言する~コメントに多くの方の激励が届くでしょう♪
皆様も見かけたことがあるんじゃないでしょうか。がんばりを報告すると、必ず誰かが反応してくれるので、大いに励みになると思います。

このほか、家族で励ましあう、しつけ専門のトレーナーさんに相談。まさに適切かつ力強い応援が得られます
さてどうでしょうか。
なんとなくできそうな気がしてきましたか?

がんばるというより 犬の気持ちで考えてみると、力が抜けて良い方向にいくかもしれませんね。 
あなたの「困った」が少しでもなくなって、楽しいワンコライフを過ごせること願っています。


要求吠えのアプローチ<番外編>クールダウン

さてここで、原因編タイプでも触れました、すぐにハイになってしまうワンちゃんです。
要求吠えをしていても、吠えることでドンドン興奮してきて要求も何も忘れてハイパーになって吠え続けるタイプです。
ぜひクールダウンの方法を知っていらっしゃるとよいでしょう。

【その1】一緒にまったり時間を作ろう


まずハイになっていない時に練習を始めます
家の中で静かな場所 邪魔の入らないところで始めます
家の中でもリードをつけてください

1. まず自分がリラックスします (これがポイントです!)
大きく息を吐きます  
その後ゆっくり息を吸います
数回繰り返します
2. 椅子に座るか、犬のそばに腰掛けます
3. リードの長さを自分のそばにいるくらいの長さのところで足で踏みます。
ある程度の距離で犬がそばに居てくれるようにするイメージです。あまり短いためにリードがピンと張ってしまわないよう、フセて寝られるくらいの長さです
4. そうっとゆっくりと犬に触るのですが、まず片手を犬の胸に当てもう片方の手は背中に沿ってゆっくりと。ものすごくゆっくり毛に触るか触らないかのタッチでなでます
この時自分も先程の深呼吸を続けます。心の中で犬が静かに自分の横にフセているイメージを浮かべましょう
 ※ さわることで興奮してしまうコはさわらなくても結構です
 ※ Tタッチを使うと、よりはやくクールダウンさせることができます
5. ハイパーな子は決してじっとしていないと思います!ジタバタしていても同じようにゆっくり深呼吸、自分のペースは変えずにまったりする感じで続けます
6. 必ず少し静かになる瞬間があります。そのときには低い声でゆっくりと「いいこね」と静かにつぶやきます
(ここ高い声で「いいこね〜!」と言うと、ハイパーのスイッチが入りがち)
7. おそらく最初は一瞬静かになってもまたジタバタ始めると思います。そうしたらもう少し先程のように自分だけまったりを続けます。
8. ふっと静かになったら、こちらも自然に立ち上がり、終わりにします

なんでもない練習ですが、繰り返し時々行うことで静かにしている時間が増えてくるはずです。
何もできずどこにも行けなければ犬は伏せして休憩に入ります。その時間を作ってあげるわけです。

このような経験が心地よいのだと教えてあげます。
 
    
【その2】基本的なトレーニング(おすわり・ふせ)をレベルアップ

おすわりのできる犬は多いでしょう。
でもお散歩の時にできる犬は少ないと思います。
お散歩でも必ずできる犬は、ハイになりそうな時におすわりやフセをさせてクールダウンさせることができます。

やり方としては
1. 家の中でめざせ100%
2. 次は玄関先
3. その次は刺激の少ない屋外
4. さらにはちょっと刺激の多い公園
こんなふうにちょっとずつレベルアップしていきます。

「おすわり」といわれておすわりをするとよいことが起きれば、必ずおすわりをするようになります。
要求吠えと同じ原理です。
ご褒美をあげたり遊んであげたり、何か要求された時に逆におすわりさせてできたらその要求をかなえてあげても良いでしょう。

まず手始めの「家の中で100%近くできる」だけでも素晴らしいと思います。 

犬のしつけ方教室では、このようなレベルアップを無意識のうちに学べます。
基本的なトレーニングがなぜ必要かといえば、こんなふうにいろいろ応用できるからなんですね。

犬の吠える悩み、3部作でしたが、よろしければぜひ感想をお寄せください。
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本文:獣医師 石川安津子


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