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Life with My Dog 犬と暮らす

ペット避難、同行避難、必要最低限の知識

ペット避難。
犬と暮らす当たり前の毎日、愛犬の頭を撫でながら一度は考えたことがあるのではないでしょうか。

そこでクイズです。次のうち正解はいくつあるでしょう。

  1. 同行避難ができる避難所は少ない、まず無理
  2. 犬と車中泊することで、何とかなるし誰にも迷惑はかからない
  3. 犬を家に置いて行く場合、最低限フードがあれば生きていける
  4. 小型犬であれば、バッグに入れて避難所で生活できる
  5. 愛犬を一時預かってもらって帰らない事例があった

正解は、最後の 5. だけです。

2018年4月22日、「犬と暮らす」ではペット災害対策協会理事山﨑恵子先生(一般社団法人アニマル・リテラシー総研代表)を招聘してセミナーワークショップ「後悔したくない災害時のペット避難」を開催しました。

その時の深く、豊富で役に立つ情報の中からこの記事では「必要最低限の知識」として、他にはない切り口で整理して、犬と暮らすご家族に提供したいと思います。また、巻末にある情報源や主宰が聞き取りした内容も盛り込んで、できるだけお役に立てる内容にいたします。

同行避難ができる避難所
2016年4月、熊本県と大分県で相次いで震度7を最大とする地震が発生しました。
この時、SNSを通して、「同行避難できる避難所」リストが掲載された結果、当該地域に住む犬と暮らすご家族から問い合わせが殺到。深刻な人命救助に関わる連絡に多大な悪影響があったと聞いています。

ところが事実としては、熊本県にある全ての避難所は同行避難ができたそうです。

ほとんどの避難所に同行避難ができることは、この記事を読まれている皆様の地域にも当てはまることではないでしょうか。
現在、国も地方自治体のほとんどがペットの同行避難を前提とした方針を打ち出しています。東京都の場合も熊本県と同様、全ての避難所はペットの同行避難ができます。

調査によると、わずか20.8%の犬猫飼育者しか「ペットの同行避難推奨」を知らなかったと言います。〜アイペット損害保険調べ(2018年3月)

なーんだ、良かったと思ってからが肝心です。

同行避難とは愛犬を同行することができる避難所のことですが、詳細の定義を確認したいと思います。
「同行避難」と「同伴避難」はまた別の意味であることをご存知の方も多いと思います。
「同行避難」は避難所まで飼い主がペットを連れて行くことができるという意味です。「同伴」とは避難所生活で、飼い主とペットが同じ空間で生活ができるという意味です。

「同行避難」の場合、避難所では人間が生活する区画とペットが置かれる区画は分けられることになります。

 

車中泊なら安心?
愛犬と逃げても避難所で同じ場所にいられないなら、車中泊することにしよう。
そう決めているご家族もいらっしゃるかもしれません。

犬と車中生活。
ある程度長期化するとサバイバルできなくなる問題が、熊本の震災時にあったことが知られています。
筆頭に挙げられるのが人のエコノミー症候群による関連死ですが、この他にも救援物資の配布をはじめとした情報の遅れという問題が発生したそうです。つまり、車中泊で孤立をしていると助かる救援物資も情報も入ってこなくなりやすい。
救援物資の中には当然、フードやペットシーツなど犬のケア用品もあります。

犬をはじめとしたペットと同行避難は、国と地方自治体も奨励していることです。
動物愛護の観点のみならず、放浪動物による人への危害を防止するためにもとても重要です。これは、飼い主の責任です。
放浪動物とは、震災時に逃げてしまって放浪するペットのことです。あなたの愛犬も、災害時には放浪動物になりうるのです。

 

愛犬が逃亡する可能性は高い
災害時は、異常事態です。

いつもは「○○ちゃん」と呼べば寄ってくる愛犬も、パニック状態になり本能的にどこかへ逃亡してしまう。

愛犬を呼んでも逃げて捕まえられなくなる可能性があることを、私たち飼い主は予知しておく必要があります。逃亡してしまえば二度と会えなくなるかもしれません。

愛犬を見つけて再会するために役立つ、鑑札や迷子札をあなたの犬の体に付けていますか?またマイクロチップを埋めていますか?
マイクロチップが入っているから大丈夫というご家族。そのデータがどこで管理されているかご存知ですか?日本では4団体が管理していると言いますので、登録場所がどこなのかを調べておく方がいいでしょう。

マイクロチップはリーダーが必要になりますが、飼い主が今簡単にできることもあります。
例えば、首輪の裏側に油性マジックペンで苗字と電話番号を書いておく。
さらには自分の居住地域以外の遠方に住む親戚や知人の許可をとって、万が一の場合の連絡先として電話番号を書いておく。
もし愛犬が放浪して保護された場合、自分には連絡がつかない事態になっていても、被災していない地域の知人から愛犬の身元を確証してもらうことができます。

さて、いよいよ同行避難。

そもそも本当に愛犬は避難所に入れるのか?
避難所はどうなるのか疑問が不安となったため、主宰は愛犬の主治医の先生に聞いてみました。地元獣医師会の会員でもいらっしゃいますから「同行避難」に詳しいです。
まず避難所まで同行、受け入れられるのは畜犬登録をしていることが最重要になります。
畜犬登録をすれば狂犬病予防接種を受けた注射済票が交付されます。一緒にワクチン証明も必須です。

畜犬登録、予防接種の証明があれば、たとえ避難所が犬や猫で溢れても、最優先で居ることができますよ。そう、主治医の獣医さんはおっしゃいました。逆に、ワクチン接種の証明がなければ断られてしまうことになりますので注意しましょう。

災害が起きてからでは、札や証明を探す時間がありません。必ず愛犬の身につけておきます。

畜犬登録をしていない犬の頭数実態は把握されていないそうで、首都圏など人口とペット密集地の場合、たとえ同行避難を推奨していても実際のところ全頭数を収容できる広さが確保できるかどうかはわからない、と主宰の住む地域の主治医から聞きました。
みなさまも、地元獣医師の方から一度ヒアリングされることを強くお勧めします。

愛犬と、いざ避難所に滞在することになる場合。避難所に抵抗を感じる飼い主様は、愛犬が他人や他のペットとの間でトラブルが起きることを心配されていないでしょうか。

近所の小中学校など広域な場所に避難してくる住人の中には、ペットアレルギーの方もおられます。
自分自身を含め、負傷したり身内の無事がわからない、あるいは不幸にも命を落としたなど、考えたくないのですが辛い心情を耐えていることも十分考えられます。

そのような状況の中で、急な避難先では想定外のことばかり、愛犬が落ち着く環境設定を満足にできなくなるかもしれません。
「あれはないですか?」「これでは困ります」と、犬のために主張したくなることもあるでしょう。
実際、過去の震災では、避難所が開設されたばかりで住民が集まってきた時の飼い主側のマナーが問われることもあったそうです。
同行避難を推奨している以上、私たち犬と暮らす家族には愛犬を同行してくる権利があるのですが、権利を主張するには犬を管理する義務があります。


愛犬を守るためにこれだけは!

犬の管理義務について考えるとき、それはイコール愛犬を守ることです。

避難所は、前述した通り近隣の小中学校になることが多いそうです。「同行避難」とはすなわち同じ避難所内であっても、住民のいる場所とペットの場所が隔離されることも前述しましたが、自転車置き場になることがよくあるそうです。

愛犬を自転車置き場にどう滞在させるのか。
一番安全で、犬にとってもストレスが少ないのはハードクレートです。



近隣に住むあらゆる犬や猫が区画化された1箇所に集められる状態を想像してみましょう。

他のペットが苦手でも、もし全てのペットがクレートの中にいたら。
相手が見えない。隠れて籠ることができる(そもそも犬は、穴倉的な場所が好きです)
むき出しで繋がれているよりもストレスが少なくなります。


また、天候による暴風雨、突風、余震による落下物や割れ物。これらから愛犬を守るためにも頑丈なクレートの中にいれば、だいぶ安心ではありませんか?

愛犬はそれでもストレスで元気がなくなるかもしれません。食も細くなる可能性もあります。
愛犬には普段、どんなフードあげているでしょうか。ドライフードを備蓄しているご家族も多いと思いますが、ウェットあるいは手作りを愛犬に与えている場合もあるでしょう。

避難所で食べなくなる。

そんな愛犬の体調も考慮して、お肉の缶詰も備蓄に加えるといいでしょう。これは食いつくぞ、というとっておきです。

老犬や療養中の愛犬には常備薬の備蓄も必須です。
現在、愛犬に投与している薬はありませんか?災害時に備えて備蓄品目に必ず加えるようにしましょう。

最大に大切な備蓄。それは、水です。

犬は何週間か食べなくても生きていけますが水がなければ死んでしまいます。



これは止むを得ず自宅に犬を置いていく場合でも同じです。フードを置いておけば大丈夫と思いがちですが、犬の命を繋ぐのは水です。
特に、ドライフードのみを食べ続けている犬は軽度の脱水症状だと言います。
私たち人間も、考えてみましょう。スルメやおせんべいなど乾きものだけを食べ続けていたら喉が渇いて苦しくなりそうではないですか?生き物には水が必要です。

犬と暮らすご家族の中には、犬以外の動物も一緒という方もおられると思います。
猫の場合は、犬よりももっと脱走する可能性が高いです。
災害をきっかけに脱走すると、ほとんどの場合生き別れになるそうです。猫は人がいなくても生きていけるが、犬は人がいないと生きていけない、と言います。
猫の場合はすぐに家中の全てを戸締りし、水とフードを十分に置いて閉じ込めても中で生き抜くことができるそうです。


犬を人に託すとき
人がいなくては生きていけないのが犬。



ご家族自身がお世話ができなくなる事態となれば、命を繋ぐために犬を一次的に誰かにお任せする必要が出てくるかもしれません。誰かにお世話をお願いするとなると、人馴れしている犬かどうかが最低限必要になります。

「この子は、私じゃないとダメなの」
平常時には可愛いわね〜と微笑ましいかもしれませんが、災害時にはそうは言っておられません。
うちの愛犬は、いざという時に他人様に預けて大丈夫だろうか、とチェックをしてみましょう。

とても臆病。
知らない人に唸る、咬みつくかもしれない。
ちょっとでも私が離れるとずっと吠えている。
本当はなんとかしないといけないんだけれど、と思っている愛犬の気になる行動はありませんか?

少しでも思い当たるなら、愛犬の命を守るために、対策を考えるなら今です。
災害が起きてから犬はしつけることはできません。
お願いする相手が困らないように。可愛がってもらえるように。


二度と会えなくなる落とし穴

災害時、本当にあった避けたい事態。人が間に入った生き別れです。

被災して、しばらくは愛犬と一緒に暮らすことが困難になった場合、誰かに託して、後から必ず迎えに行く選択に迫られることも起きます。
そんなとき、安心できそうな団体名を名乗った人が現れた。一刻を争う時に慌てて、でも安心して愛犬を引き渡した。
そして、待ちに待った、迎えに行けるタイミングになった時。

そのような愛護団体は存在しなかった。あるいは、「うちの団体では、被災地からの保護活動をしていませんが」と答えが返ってきた。

つまり、愛護団体を名乗った人物がいたということです。
ここで誤解を避けるために明白にしたいのですが、実在する愛護団体が犬を連れ去ったという話ではありません。

では、うちの愛犬を引き取った人物はどこに行ってしまったのか。



災害の混乱時に、犬の誘拐。価値ある純血種であるとか、「災害ブランド」。
被災犬ということでブランド化されてしまうそうです。
信じたくありませんが、本当に起きたそうです。

このことからも、引き取る時に飼い主であるという確かな証明がとても重要になります。

愛犬とご自分の写真。それも携帯やSNSに入っているものではなくて現像した写真として持っていますか?
ご家族が皆、愛犬と一緒に写っている写真をすぐ取り出せるように持っていることが、このような悲劇を防ぐ手立てになります。

さて、4月に開催したセミナーワークショップでは、以下のテーマについても参加型で論じられました。
「犬と暮らしていない、ペットと暮らしていない住人とペットと暮らす住人の共存について」

過去の震災では「同行避難」が推奨されているにも関わらず、ペットを連れていけないから、と残った住人の救済に、莫大な資金がかかったそうです。
この資金には、ペットと暮らしていない人を含む納税者の税金が使われることを、私たち犬と暮らす家族は忘れてはいけないと思います。
このこともあって国は「同行避難」を推奨しているのですが、この権利を持つ私たち犬と暮らす住民には、自分の愛犬を守り他人に迷惑をかけない管理をする義務と責任があります。

以上、この記事からはセミナーワークショップの全てをカバーできていませんが、今本当に知っていただきたいと願うことを中心にまとめてみました。

皆様の地元の市役所や出張所などに、ペット避難の資料が置いてあると思います。
環境省からのガイドラインも参考になります。
「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」(ダウンロードはこちらから!>>>

国や地方自治体のセミナーやパンフレットは主に、

A) 備蓄
B) しつけ
C) 畜犬登録や身元特定の必要

について書かれていると思います。この記事の本文を読んでいただけることで、その背景や理由を少しでもご理解いただけたでしょうか。

いつ来るともわからない災害でペット避難をする事態になってしまった時、一人でも多くの飼い主様が必要最低限の準備と心構えを持って愛犬を守り、同じ地域に暮らす共同体の中で動物と暮らしていない隣人と助け合いながら、命を守って行けるようになることを願ってやみません。

 

2018年4月22日「後悔したくない災害時のペット避難」より

参考:以下のセミナーで拝聴した、富士岡剛氏(HUG代表理事)ご説明による熊本地震の内容を一部引用しています。主催者様の御許可をいただき感謝いたしますと共に、ここにご紹介いたします。

2018年2月25日「災害時ペット同行避難の備えと対応のためのセミナー」
(主催:一般社団法人 HUG(HUG THE BROKEN HEARTS)様、特定非営利活動法人アニマルワン様)




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