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「犬は私をどう思っているの」ヘソ天は神話なのか

なんと、犬には感情がある!

科学的な証明として米国で発表があったのは21世紀に入ってしばらくのことでした。
神経科学者が、愛犬をトレーニングしたことで、麻酔をかけずにMRIに入れて犬の感情の変化を読み取ったというのです。
What It’s Like to Be a Dog: And Other Adventures in Animal Neuroscience

そして、著書への読者感想に多く寄せられていたのは、

「ずっと以前から犬に感情があることくらい、知っていましたとも!」

という言葉の数々でした。

参考までに、この神経科学者は自分の愛犬のみならずイルカなど他の生物も感情を持っていることを科学的に証明しています。

犬は何を考えてこんなことをするのか?



犬は感情を持っている。
持っていないのは、それを表現する(人間と共通の)言語だけ。
この「言語」を持たないがために、どれだけ私たち飼い主は、
「この子は私のことをどう思っているのだろう?」と首を傾げてきたことでしょう。

なんでこんなことするの!!!
と、困った時にはネット検索をすると…

例えば、やってほしくないことをされた時、
言うことを聞くお利口さんにするには、

  • 仰向けにひっくり返して動けないように押さえつけ、動かなくなるまで人間が主人だと教えましょう
  • 不適切に排泄した場所に鼻を擦り付けて、イケナイをとことん教え込みましょう
  • 噛みつかれたら、噛みつき返しましょう!


犬に感情があることを、薄々わかっていた私たちは思いませんでしたか?
「こんなことをしたら、犬の心が傷つくのではないだろうか」

犬のしつけに関していうと、今人間のみならず犬も「褒めて伸ばす」が、従来の「体罰でしつける」よりもよく聞かれるようになってきました。
(褒めてしつけるやり方については、「なぜ体罰を勧めない専門家が増えてきているのか」をご参照ください)


犬は飼い主が好きなのか?おやつが好きなのか?

前述の科学者が試した、犬の感情に関するMRI実験でいくつか興味深いものがあります。
犬が喜びの感情を出すのは「おやつか?」「パパさん(筆者である神経科学者)か?」

もちろん他の犬たちを含めて「おやつ」に好意的な感情を示していたのですが、同時に飼い主さんに対して愛情反応も見せたと言います。

「褒めるしつけだと、結局おやつで釣っているだけでよくない」
「おやつで喜ばない犬は、しつけができなくなる」

と言いますが、この科学的な証明からすると、おやつを使うしつけの否定、そうとも言い切れないのではないでしょうか。

現に、私の知人の愛犬は室内のトイレで上手に排泄をすると、ダッシュしてきて褒められようと「ドヤ顔」をするとおっしゃいます。


この方は10年前愛犬のパピー時代のしつけに、トリーツを使っていたトレーニングの名残で、今も終わると駆け寄ってくると笑っていました。実は主宰の愛犬も全く同じです。別におやつを約束しているわけではないのに駆け寄ってきて、褒められると私の足元で小躍りするような動きをします。

テリントンTタッチのインストラクター、デビー・ポッツ氏
「犬がする行動の根拠を、人の主観で決めつけてはいけない」と言います。
他にも行動学の研究者がこの「レッテルはり」について注意を促しています。

ポッツ氏が続けたように、「とどのつまり、本当は何を思っているかなんて、当の犬にしかとわからない」のです!

ヘソ天は飼い主を信頼する究極の証なのか

今年の春のことです。このような相談がありました。
「もうすぐ1歳になる愛犬ですが、ヘソ天で寝てくれません。
まだ懐いてくれていないみたいで。ヘソ天をしないとは、私は飼い主として何がいけないのでしょう。」

ヘソ天とは、文字どおりおヘソが天井に向くようにお腹を上にして犬が寝ている状態を言います。
ヘソ天で眠ると、犬はリラックスしてその場の環境に慣れきっている証だと言われています。

ご相談くださった方は、愛犬との関係を大切にする優しい方で、おそらくどこかで、犬がそのご家族を完全に信頼した感情の証として、(犬は皆?)いつかはヘソ天で寝るようになる、という情報を受けたのかもしれません。
そしてヘソ天の寝相をしない愛犬が心配になってしまわれたのでしょう。

「我が家の愛犬もヘソ天で寝たことはありませんよ。でもちっとも気にしていません」とお伝えすると、その方は目を大きく見開いて驚き、次の瞬間に心から安堵されたような表情をされました。
「では… うちだけではなかったのですね。ヘソ天で寝ない犬も、いるのですね」
その時の笑顔は忘れません。

ヘソ天で寝ない犬とご家族との関係。問題がないご家庭がどのくらいあるのか、統計を取ったことはありません。
しかし、この「ヘソ天で寝ない」がどんな感情に基づいているのかについては、犬に聞いてみないとその理由はわかりません!
もしかしたら、我が家のお愛犬は、

「仰向けに寝ると、ヘルニアの古傷が痛いんだよ」とか
「この家はオイラが見張っているんだから、油断しないぞ」とか
「横向きゴロンの方が好きなだけだよ」

なんて思っているかもしれませんが、本当のことはわかりません。

一発で犬にやってほしくない問題行動を止めたい!



犬も感情を持っていることが科学的に証明された。

そのことを踏まえると、私たち家族が悪気がなくてしてしまうことも違った見方ができないでしょうか。
あるいは、何気なく「していないこと」もあります。

愛犬が、連日長時間のお留守番をしている一人暮らしの方からのご相談でした。
同居していたご家族がお仕事の関係で離れてしまったことをきっかけに、お留守番から帰宅すると毎日愛犬が部屋を破壊、さらには不適切な排泄をして困っていらっしゃいました。
お仕事のストレスと疲労を抱えて帰宅しても、毎晩まずはお掃除から。

これはとても大変です!

一発でおとなしくなる方法、しつけ法はないものでしょうか」

と仰るのですが、そのお気持ちは理解できます。
毎日働いて愛犬のご飯代を稼がないと。それに、毎晩のお掃除では「一発で」治るしつけを探したくなるのもうなづけます。

犬に感情があることを踏まえて、考えてみました。
このワンコさん、以前までは家に他のご家族もいらしたので、ご相談者が夜帰宅するまでの間も誰かがいました。ところが最近は、毎日10時間以上ずーっと1頭だけで家の中で閉じこもっています。
犬の感情を考えてみると、まずは退屈ですよね。それに寂しいという感情もあるでしょう。
これが、来る日も来る日も続けば…

お散歩をしていますか?とお聞きしたところ、週末にするだけだとのことでした。それも疲れているし他の用事を入れているので毎回ではない、とのこと。
まだ若い中型犬とのことでした。イギリスの行動学研究によると、1日に30分以上のお散歩を2回必要なところです。
退屈、そして寂しいという犬の感情を持ち続けた挙句、お散歩は週に1回できるかできないか。
そんな犬の感情のはけ口として、室内のものを破壊、排泄も適切にできなくなる。

そこで、選択肢は二つです。
毎日、お疲れで帰宅後に排泄物のお掃除と、早朝や夜にワンちゃんのお散歩。どちらの方がいいでしょうか。

さて、このケースのようにお留守番中に起きる犬の困った行動を「分離不安」と言いますが、詳しい対処法はこちらにあります。
「犬の困った!助けて! 〜 お留守番ができない」

毎日お散歩を続けることと、その他環境などを見直すことで、「一発で」はないにせよ、悩みは解消されていきました。


ヘソ天は日本だけの神話なのか

前述のポッツ氏が日本でワークショップをされていて、とても驚いたことがあるそうです。

愛犬を膝の上で仰向けで寝かせる(つまりヘソ天!)ことを「リラックスポジション」と呼んで奨励されていると知って、とてもびっくりされたそうです。
人がいいことだと思ってやっている膝上のヘソ天は、実際は不安定な体の置かれ方で動くことができず、多くの犬にとって危険を感じる怖い姿勢です。膝上のヘソ天状態は、犬に動く自由を奪い、犬の感情を表現することもできません。

犬が、自分から飼い主の膝上でヘソ天になることを選び、その姿勢が好きで、いつでも自由に動けるならば話は別です。

ワークショップ中の参加者が、2人ほど嬉しそうに、実際に写真のように愛犬を膝上でヘソ天にして見せてくれたと言います。そのうちのお1人は、この「リラックスポジション」にすることで初めて愛犬の爪切りができる。膝に乗せてヘソ天にしないと爪切りをしようとすると咬みつくのだ、と教えてくれたそうです。

ポッツ氏は、爪切りのためヘソ天にされていることこそが「恐怖のポジション」であることを教えていると言います。不安定な状態に凍りつき、「爪を切られたくないよ」という感情の表現を抑え込まれます。信頼関係を築く代わりに犬の感情がなおざりにされる結果となっているのです。

自分が高いところにヘソ天、動くと落ちそうになったら

自分がその状態になったらと想像しましょう。
もしも巨人の膝の上に仰向けにされたら!?

高いところで仰向けにされて身動きも取れなくされてしまったら。私たちも恐怖のあまり身動きを取れずに動けなくなると思いませんか?
犬の状態を自分に置き換えて考えることで、犬のためになることか、それともレッテル貼りなのかどうか、気づくことができます。

もちろん「リラックスポジション」を信じていたこの方は、愛犬とのより良い関係を築くためにしていたのだと思います。
犬と暮らす家族である私たちが、愛犬とのより良い関係のためを思ってやること、あるいは何気なくやっていること、やっていないこと。
その多くには「思い込み」「レッテル貼り」がないかどうか、いつも気をつけたいと思います。

そして、愛犬は本当のところ…
自分のことをどう思っているのだろう?

これは永遠の問いのままなのかもしれません。

 

本文:犬と暮らす主宰 武田裕美子

監修:獣医師 石川安津子

   テリントンTタッチ インストラクター デビー・ポッツ(引用部分のみ)




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